社会に与える影響の処理と社会への貢献

組織が直面する社会的責任は、次の2つで生まれます。

  • 自らの活動が社会に対して与える影響
  • 自らの活動とは関わりない社会自体の問題

いずれの問題も、社会的責任を果たすべくマネジメントしなければなりません。
ここでドラッカーが何度も繰り返していることは、

社会に対する責任ではなく、自らの組織に対する責任として対応しなければならない

ということです。

自らの活動が社会に対して与える影響

組織は社会の中で活動し、社会に影響を与えます。

その影響は、成果として本来意図しているものだけとは限りません。意図しない副産物も生み出す可能性があります。公害問題が典型です。

組織の活動に伴って与えた影響であれば、故意でなくても組織に責任があるととらえなければなりません。世論が反対しないことは言い訳になりません。過去の例にも見たとおり、いずれは高い代償を払わされることになるからです。

社会に対する責任ではなく、自らの組織に対する責任として対応する必要があります。

まずは影響の中身を明らかにし、それに応じて対応します。

影響を予期する

冷静かつ現実的に、社会に及ぼす影響を予期します。

自分たちがしていることが正しいかどうかではなく、社会や顧客が対価を払っているものかどうかが問題です。そもそも社会や顧客が対価を払っているものでなければ、その活動は単なる影響に過ぎず、そもそも行うべきではありません。

新しい技術を導入した場合や、社会的および経済的なイノベーションを行った場合、それらの影響を予測することは困難です。影響を注意深く監視することが重要になります。

組織の目的や使命の達成に不可欠でないもの

影響の原因となっている活動を止めるか、縮小します。それにより、影響をなくすか、最小限にします。

組織の目的や使命の達成に不可欠なもの

まずは、影響の除去を収益事業にできないかを検討します。

  • ダウ・ケミカルは、除去した汚染物質から新製品を開発しました。
  • デュポンは、毒性除去のプロセスを開発し、事業化しました。

影響を除去するためにコスト増を招く場合、最小のコストで最大の効果をもたらす規制手段を検討し、成案を用意したうえで法制化を働きかけます。

競争上の不利を防ぐため、同業者にも同一ルールを受け入れさせることが重要です。これをおろそかにすると、後々社会の批判を受けることになります。

自らの活動とは関わりない社会自体の問題

組織は社会の機関ですから、社会自体の問題から影響を受ける存在です。

健全な組織は、不健全な社会では機能することができません。企業の健康はマネジメントの責任ですから、社会自体の不健全をおろそかにすることはできません。

最善の策は、同じです。自らの目的に沿った事業上の機会に転換することによって、自らの利益とできないかを検討します。社会的イノベーションの取組みです。

残る課題は、次のとおりです。

事業上の機会に転換できない問題について、どの程度まで取り組まなければならないのか