同族企業のマネジメント

ドラッカーは、多様性のマネジメントの問題として、同族企業を取り上げています。

同族企業であっても、中企業以上の規模になると、マネジメントの重荷は、創業者一族と直接関係のないプロのマネジメントに任せなければならなくなります。

そのため、一族以外の第一級の人物が活躍できる仕組みをつくる必要があります。一族でない者にとって、一族の者と働くことが苦でないようにするためには何が必要かを早い段階から考えておきます。

同族企業の存続・繁栄に関して、ドラッカーは根本的に重要な指摘をしています。企業に奉仕するために一族が存在するという認識です。一族の繁栄に奉仕するために会社が存在すると考える限り、同族企業の存続・繁栄はありません。

能力による判定を重視する

能力を差し置いて、一族の者であることをトップマネジメントの一員とするための判断基準にしてはいけません。自らの実力によってトップマネジメントの一員になれる者だけを働き続けさせるようにします。

一族の者でないものをトップマネジメントの一員に起用する

トップマネジメントのメンバーのうち、少なくとも一名は一族でない者を起用すべきです。ドラッカーは、専門能力が重要な意味をもつ財務や開発のトップが妥当であろうと指摘しています。

当然、一族のトップマネジメントと同等の処遇をしなければなりません。

組織の規模が大きくなってくると、トップマネジメント以外にも、多くの専門的な地位が必要になります。生産、マーケティング、財務、研究開発、人事などのトップです。いずれも高度な知識と経験が必要ですので、能力に従って一族でない者をつけることが必要になってきます。

同族企業で、一族の者でない優れた人材を引きつけ、維持するためにどうしても必要なことです。

一族の者であっても能力がない場合の処遇

重要なポストで報いようとすると、事業の成果に悪影響を与えるだけでなく、従業員のやる気を失わせ、優秀な人材は離れていきます。その場合の損失は計り知れません。

重要な地位につけられない一族の者は、配当の受益者とするなど、お金を渡すことで報います。お金で解決した方が必ず安くつきます。

後継者問題への対処

創業者一族の誰かが引退するとき、よく混乱が起こると言います。自分の後継者として息子をつけようとしたり、娘婿をつけようとしたりします。

自分たちの同僚として一族でない者をつけることができたとしても、自分の後継には強い執着をもつようです。

このような後継者問題の解決方法としてドラッカーが推奨するのは、利害関係がなく、一族でない信頼できる者に意思決定を委ねることです。

しかも、後継者問題が起こる前、できれば、後継者について創業者が考え始める前に、外部にそのような者を見つけておくことが重要であると言っています。