関係中心の組織

関係中心であるシステム型組織は、1960年代アメリカの宇宙開発のための組織構造として発展したとされています。

チーム型組織を発展させたものです。違いは、チーム型組織が個人を構成単位とするのに対し、システム型組織は多種多様な組織と個人が構成単位となります。政府機関、大小の企業、大学、研究者個人などです。

大きな組織の一部が構成単位となることもあれば、独立した組織全体が構成単位となる場合もあります。契約関係があって支配を受けるものもあれば、いかなる支配を受けないものあります。

参加者は不変でなく、最後まで参加する者もいれば、自らの役割が終了したら途中でいなくなる者もいます。

システム型組織の内部では、問題と状況に応じて、他の組織構造(職能別、チーム型、連邦分権、擬似分権)を駆使することもあります。

とても複雑で、最も条件が厳しい組織構造です。

ドラッカーは、システム型組織について、ほとんどの組織に無縁であり、組織構造として望ましくないと指摘します。しかし、システム型組織を知り、理解しておかなければならないと言います。

より単純で適用の容易な組織構造で十分な場合には、システム型組織を使うべきでないことを知る必要があります。

日本で古くから使われてきたシステム型組織

アメリカの宇宙開発のための組織構造として発展したとされるシステム型組織ですが、ドラッカーによれば、その前から日本の企業で長い間使われてきたと指摘しています。

日本の大企業と下請けや商社との関係、財閥グループです。日本では、中小零細メーカー、小売、卸といった前近代的な経済と、製造、金融、商業といった大企業の近代的な経済が、長い間共存してきたことを指摘します。

原材料、技術の供給源、市場、投資家、パートナーとしてのグローバル経済が、商社により統合されてきたことも指摘します。

これらの関係が、システム型組織であったと言います。

システム型組織のニーズ

グローバル企業と広告代理店などの関係に利用できると言います。

グローバル企業と広告代理店は、ともにグローバル化し、各国に展開しています。それぞれが連邦分権組織と言えます。しかし、各国において、グローバル企業と広告代理店の各拠点が独自に密接な連携を図ることも求められます。

グローバル企業と会計事務所との関係も同様です。

そこにあるのは、多様な文化と価値観を統合して行動を一体化したいというニーズです。

単位組織はそれぞれに特有の方法によって仕事をし、成果をあげます。一方で、すべての構成単位が、共通の目的に向けて仕事をしたいと考えています。

絆と信頼が直接的かつ強固であることが必要です。それぞれのものの考え方、仕事の方法、判断基準の違いをカバーできなければなりません。

問題点

明晰さに欠け、とても分かりにくい組織構造です。安定性にも欠け、明日のトップマネジメントの育成とテストはできそうにありません。

理解が容易ではありません。自らの仕事、システム全体の仕事、両者の関係、どれも理解が困難です。

そのため、経済的ではありません。コミュニケーションが困難を極めます。宇宙開発において、NASAのトップは、時間の2/3を会議に使っていたと言います。意思決定も困難です。誰が意思決定すべきか、何が重要な意思決定かを明らかにすることが容易ではありません。

日本の企業が、会議に長時間を費やし、意思決定に時間がかかると言われてきた本当の理由がここにあると、ドラッカーは指摘します。

利点

柔軟性に富むことは間違いありません。組織の構成自体が極めて柔軟で、多様ですから、新しいアイデアを受け入れる能力は高いと言えます。

条件

明確な目標

システム型組織の目標は、よく変化すると言います。しかも、急に変化すると言います。それでも、目標は明確でなければなりません。

組織の構成単位それぞれの目標は、組織全体の目標から導き出され、直接のつながりを持たなければなりません。

自分たちの事業は何か、何であるべきかを十二分に検討したときに限り、システム型組織は有効に機能すると指摘します。

コミュニケーションの責任

コミュニケーションについて、組織の構成単位のすべてが責任を持たなければなりません。全体の基本的な目的、目標、戦略が全員に理解されるよう最大の注意を払わなければなりません。

あらゆる種類の疑問とアイデアが受け入れられ、注意して聞かれ、重視され、検討され、理解され、結論を出されなければなりません。

システムの分解を防ぐのは、仕組みではありません。人間関係のみです。内部の対立を調停しなければなりません。所管、方針、予算、人事、優先順位に関する論争に決着をつけなければなりません。

重要なポストにある者は、組織を動かすこと自体にほとんどの時間を費やさなければならないと言います。

システム全体への責任

組織のすべての構成単位が、自らの目標以外のことにも責任を持たなければなりません。すべての構成単位が、システム全体のトップマネジメントであるかのように責任を果たさなければなりません。

責任を伴う高度の裁量権、イノベーションを行う機会、計画を変更する権限を持たなければならないと言います。

システム全体で何が行われているかを知るために、すべての構成員が不断の努力をしなければなりません。