組織構造に関する学び

組織構造に関する研究は長い歴史をもちます。主に2つの組織構造が長らく提案され、実際に利用されてきました。

  • 機能別組織
  • 連邦分権組織

その後、新たな組織構造を求めるニーズが生まれて、さまざまに研究が続けられてきました。ドラッカーは、長い研究のなかから得られた知見の中で、学ぶべきこと、捨てるべきことを明らかにします。

組織の進化

組織は自ずから進化するものではありません。自ずから進化するのは、混乱、摩擦、間違った成果です。

したがって、組織構造の探求には、分析と体系的なアプローチが必要です。

組織構造の設計

組織構造の設計は最初に手を付けるべきものではなく、最後に手を付けるべきものです。

まず、組織の基本単位を明らかにすることが必要です。組織のエンジニアリングに相当します。構造上の材料、すなわち重要な要素を特定する段階です。

基本単位とは、組織の構造上の負荷を支えるべき基幹活動の単位であり、組織の成果にとって決定的に重要な活動の単位です。

何が基本単位になるかは企業によって異なります。ドラッカーは、貢献の種類によって分類すべきであると言います。

具体例を上げると、フェヨールによる職能が、メーカーの基本単位に当たるものです。設計、調達、製造、販売、財務などが典型です。

組織構造と戦略

組織づくりの最悪の間違いは、いわゆる理想モデルや万能モデルを生きた組織に機械的に当てはめるところから生じます。

組織構造は、組織が目的を達成するための手段です。組織構造に取り組むには、目的と戦略から考えなければなりません。

戦略とは、組織の目的を果たす手段として、「われわれの事業は何か、何になるか、何であるべきか」の問いへの答えです。戦略が組織の基本単位を決めます。

組織に共通の活動

組織の基本単位は企業によって異なりますが、ドラッカーは、あらゆる組織が次の3種類の活動を持つと言います。

  1. 既存の事業に関わる活動(可能性の追求、問題の処理)
  2. トップマネジメントに関わる活動
  3. イノベーションに関わる活動

あらゆる組織がこれら3つの活動を持ちますが、これらすべてに適用できる一つの組織構造はありません。ですから、一つの組織の中に異なった組織構造を持たなければなりません。

組織構造の設計基準

「組織構造を課題中心に設計すべきか、人間中心に設計すべきか」という議論は無意味です。ドラッカーはすでに答えを出しています。

組織構造や個々の仕事の設計は課題中心であり、実際の仕事の割当は人と状況に合わせます。どちらの視点も必要です。

組織構造の型

「組織構造が階層型であるべきか自由型であるべきか」という議論がありますが、ドラッカーによると、その2つはそもそも対立する型ではありません。

階層型が厳格な組織であって、自由な組織ではないという考え方そのものが間違いです。階層型組織について、上の者の力が強くなるという批判は当たりません。

階層型では、上の者が干渉できない範囲を設定することによって、下の者を保護します。また、上司はただ一人という原則の底にも、下の者を保護する考えがあります。

つまり、階層型組織は自由を与えるのです。割り当てられた職務を遂行している限り、それ以上の責任はないからです。もちろん、階層に応じて権限と責任が適切に設定されていることが前提です。しかし、それができるのが階層型の組織構造です。

自由型組織というのは、そもそも名称が間違っています。特定の課題のための組織であり、小規模グループ、チーム型組織のことを指して言われるのですが、チーム型組織は、恒常的な組織としての階層型組織と対置すべきものではなく、並立すべきものです。

チーム型組織では、チームのメンバーに厳しい自己規律が要求されます。臨機応変な対応も求められますので、階層型組織のような自由はむしろありません。全員がチームの仕事をしなければなりません。全員がチーム全体の成果に責任を持たなければ成立しない組織形態です。

階層はあらゆる組織に必要です。最終決定を下すことのできる者が必要だからです。最終決定者がいなければ、単なる議論の場であって、目的を達成するための組織とは呼べません。

結局のところ、階層型とチーム型は、どちらも必要な組織構造です。

組織には複数の軸があります。ドラッカーは、権限、情報、課題、知識の4つの軸をあげています。一つの企業に、目的に応じて、軸の異なる複数の組織構造を持つことが求められます。

唯一絶対の組織構造

それだけが正しく、また常に正しいという唯一絶対の組織構造は存在しません。

組織構造は戦略に従いますから、戦略が異なれば組織構造は異なるのが当然です。組織は、ともに働く人たちの生産性を高めるための「道具」にすぎません。

成果を出すために組織をつくるのであり、成果こそが組織の良否の判定基準です。人のエネルギーを解き放ち、それを動員することが組織の目的です。

よって、組織の中の人間が成果をあげ、貢献できるようにする組織構造であれば、全て正しい答えです。