「体系」、「体系的」とは何か?

「体系」とは、個々の要素が互いに連携して全体としてまとまった機能を果たすものを言います。

「体系」が単なる集合と区別されるためには、個々の要素を連携させるためのルールに当たるものが必要です。

まず、全体としてのまとまりを決める目的やコンセプトが必要です。個々の要素は、目的やコンセプトに基づいて、一定の原則やパターン、手法などに従って機能を果たすことで、全体としてまとまった機能にまとめられます。

一方、「体系的」とは、「体系の性質をもった」という意味です。

例えば、「体系的な学習」という場合、次のような手順を踏んだうえで、学習していくことになるでしょう。

  1. 学習目的の設定
  2. 学習すべき科目と学習する必要がない科目の峻別
  3. 学習科目の順序、学習方法、教材などの決定
  4. 学習計画(期限を含む。)の策定

「体系」とは何か?

「体系」は、英語でいうと「system」に当たります。

個々の要素が、お互いに連携して全体としてまとまった機能を果たすものを意味します。大きくは、物的なものと知識的なものに分けられるでしょう。

物的な体系としては、組織が典型的です(参考:「組織」、「組織化」とは何か?)。人的な組織だけでなく、細胞組織などもあります。

太陽系、銀河系なども物的な体系です。複数の惑星が集まり、相互作用をしながら全体としてのまとまりをつくっています。

建物も物的な体系です。様々な材料が集まり、組み立てられ、一つの建物としての役割を果たします。

絵画も物的な体系です。いろいろな色の点や線、図形が組み合わせられ、全体として人物や風景などを表現します。

一方、知識的な体系もあります。個々の認識や知識を、一定の原理に従って論理的に集めた全体を意味します。理論体系、哲学体系、思想体系などという言い方をします。

「〇〇学」として学問化されているものは、すべて知識の体系です。「〇〇主義」というのも、思想や理論の体系です。

単なる集合との違い

様々な要素が集まることで「体系」をつくりますが、ただ集まればよいわけではありません。集合を「体系」と呼ぶには、条件があります。

個々の要素は、集められた結果、その特徴を失うわけではありません。集合の中で、その特徴を発揮することが求められます。

ただし、何の制約もなく、バラバラに特徴を発揮していては、全体のまとまりが失われます。ですから、一定のルールが存在しなければなりません。連携のためのルールです。

つまり、「体系」と呼べるには、次のような点が明らかになっている必要があります。

  1. 何のために様々な要素を集めるのか。
  2. 必要な要素、必要でない要素は何か。その選別の基準は何か。
  3. 個々の要素は、どのようなルールに従って、どのように連携するのか。

1.は、目的、コンセプト、全体としての機能を意味します。様々な要素を含んでいながらも、全体として一つであると言えるものが必要です。

2.については、1.によって大枠の基準が決まります。何でも集まればよいということではなく、目的に応じて、必要なものと必要でないものを明らかにします。

3.の連携ルールとは、個々の要素の扱い方や扱う際の制限、扱う順序、組み合わせ方などです。

これらが、単なる集合ではなく「体系」であるための条件です。

ちなみに、2.と3.については、目的に応じてゼロから考えることもありますが、多くの場合、目的に応じて様々なモデルが類型化され、モデルに応じた手法やツールなども明らかにされています。ですから、それらを流用しながらカスタマイズするのが一般的です。

例えば、「数学」という知識の体系を学校で教える場合、ゼロから内容を組み立てるのは大変です。とんでもない内容を教えられても困ります。

そのため、文部科学省が、学年ごとに学習指導要領を定めています。これが原則としてのモデルになっており、目的や最低限達成すべき目標も明らかにしています。指導内容のパターン、手法、ツールなども例示しているでしょう。各学校は、これに準拠しながら、自校の特徴を加味します。

マネジメントの体系

ドラッカーの偉大な業績の一つは、「マネジメント」を知識の体系として著したことです。

ドラッカー以前のマネジメントは、特定の分野で断片的に理論化されているにすぎませんでした。マネジメントの全体像は、経験による暗黙知として、個々の経営者に体化されていたと言ってよいでしょう。

ドラッカーによって、マネジメントが知識の体系として客観的に著されたということは、教え、学ぶことができるようになったことを意味します。ドラッカーが「現代経営学の父」と呼ばれる所以です。

ドラッカーによれば、マネジメントの体系を構成するのは、

  1. コンセプト
  2. 原則
  3. パターン
  4. 手法

です(書籍によって用語が若干違う場合もあります)。これらが、マネジメントを体系と呼べるようにするための条件です(参考:「マネジメント教育」)。

ドラッカーが示すこれらの条件は、マネジメントに限らず、広く「体系であるための条件」として参照することができます。

「体系的」とは何か?

「体系的」は、英語でいうと「systematic」に当たります。一般的に、「系統的」、「統一的」などの意味があてられていますが、単に言葉を言い換えただけで、分かりやすいとは言えません。

「的」は名詞を形容詞に変える接尾語ですから、要するに「体系の性質をもった」という理解でよいと思います。

ドラッカーは、マネジメントの関連で、「体系的な知識」、「体系的に分析する」、「体系的に学ぶ」、「体系的に調査する」など、至る所で使っています。

ドラッカーが示している体系の条件(コンセプト、原則、パターン、手法)を使って説明してみると、意味がよく理解できます。

「体系的に〇〇する」という表現の場合、

  1. 明確な目的を設定する(コンセプト)。
  2. モデルとして当てはまりそうなものを探し、参照する(パターン)。
  3. 一定の順序やルールを定め、それらに則る(原則)。
  4. 相応しい方法やツールを使う(手法)。

ということになります。

ドラッカーが、マネジメントに関連して「体系的」という言葉を使っている場合、これらの条件を意識していると考えられます。

決して、経営者の経験や勘と直感を否定しているわけではありませんが、

マネジメントは知識の体系であって、基本と原則が厳然として存在する

との強い主張が、「体系的」という言葉に込められています(参考:「基本と原則」)。